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Visiting Production 会社訪問

【第33回/2015年2月号】株式会社クロフネプロダクト

網倉理奈(以降 網倉):今日は「クロフネプロダクト」の平興史社長にお話を伺います。よろしくお願いします。

平興史社長(以降 平):よろしくお願いします。

網倉:まず最初の質問ですが、クロフネさんを設立されたきっかけは何ですか?

平:私は、元々「アバン」というCG制作会社にいまして、その後独立して「ハンマーヘッド」という事務所を立ち上げました。何年か仕事をし、人数も増えたところで名前を変えようということで「クロフネプロダクト」という名前に変えたんです。

網倉:「クロフネプロダクト」という社名の由来は何ですか?

平:実は前身の「ハンマーヘッド」という名前は、僕が金槌だから付けたんですけど(笑)

一同:(笑)

平:結局、海とかリゾートとか、バケーション的なネーミングが好きなのがあります。あとは、お客さんがウチに来るときに、少し楽しい気分になれるように海のイメージがあるものにしようと考えたことが最初にありました。そして、もう1つのイメージとして海賊船的なもの、そしてもう1つは僕が黒い服ばかり着ていたので、、

網倉:(笑)

平:またネーミングで悩んでいた時に、ラジオから「黒船」(サディスティック•ミカ•バンド 1974)という曲が流れてきて、いい名前だなと感じました。ただ「黒船」だと、お菓子とかラーメン屋とかが存在するので、“もの創り”だよねっていうことで「クロフネプロダクト」というネーミングにしました。

網倉:そうなんですか。

平:外国人に聞かれた場合は、黒沢明と三船敏郎を足して“クロフネ”にしましたって言う事にしています。 “Kurosawa and Mifune, You know?(笑)。

網倉:そっちの答えですか(笑)

菊地瞳(以降 菊地):今までいろいろなお仕事されていて、一番印象に残った作品はなんですか?

平:「ゴジラ FINAL WARS」は印象に残ってますね。僕たちはオーストラリアに出る怪獣の担当だったんですけど、その為にオーストラリアのロケに行きました。それとアメリカ版の「GODZILLA」(ローランド•エメリッヒ監督1998)をCGで作るということだったので、映画のパンフレットとか、ぬいぐるみとかまでも参考にしながら制作しました。あと、その当時はまだ「ハンマーヘッド」だったのですが、「ゴジラ FINAL WARS」に参加された他社さんはメジャーなスタジオばかりで、「ハンマーヘッドって誰だ?」って言われるくらい僕たちだけ無名でした。その中で制作したので特に印象に残っています。

菊地:そこから今日までいろいろな作品を担当されるようになりましたね。

平:そうですね。ただ「クロフネ」という名前が知れたのは「相棒」からだとは思っています。

菊地:そうですね。

平:「ハンマーヘッド」の頃は、「座頭市」(北野武監督 2003)を担当してから知られるようにはなりました。

岡村美里(以降 岡村):クロフネさんと言うと、実写CGのイメージがありますが、実写CGにこだわりがあるのでしょうか?

平:僕自身がCGをやろうとしたきっかけは、普通に映画制作がしたいということだったので、映画の世界に入れれば何でもやりたいと思っていました。ですから、映画とかTVへのこだわりは確かにあります。昔はゲーム、CM、映画、そしてTVと様々なジャンルがありましたが、その中で映画のことだったらいろいろ話せるので、こだわっているというよりはいつのまにかそうなったというのが実情です。

岡村美里(以降 岡村):平さんというと社長さんという印象があるのですが、元々はCGデザイナーさんなのでしょうか?

平:一番最初の会社「アバン」では、営業職でした。営業担当だったのですがその時はCGを勉強させられました。ただ僕ができたのはボールが跳ねるといった初歩的なアニメーションくらいまででした。それをやってみて、僕は人とのつながりで仕事をいただくような役割のほうが向いてるなと感じました。

網倉:実写CGとアニメCG、フルCGアニメ等は技術的に違うのでしょうか。

平:ノウハウは確かに違うのですが、作業している側からみるとそんなに変わらないです。どこに比重を置くかというくらいで、基本的にはそんなに変わらないです。

齊藤奈津子(以降 齊藤)実写CGで一番大変なことは何ですか?

平:その映像を見た時に、CGとか合成したということが絶対バレてはいけないことです。それと現場独特の雰囲気をどこまで吸収できて作れるかということに気をつけます。

菊地:実写の中でも、クロフネさんというと、時代劇や刑事ドラマのイメージがありますが、CGを作る上で気をつける点にそれぞれ違いはあるのですか?

平:現代劇のほうがよりリアルに作らないといけないと思います。逆に時代劇はその当時を見たことがある人はいないのでそれぞれの作品のイメージで作ることになります。

岡村:時代劇と刑事ものの仕事が多いのは、そこにこだわりがあるからでしょうか?

平:僕らでは仕事を選んでいないです。僕自身はものすごく時代劇が好きなので、時代劇の仕事を好んで受けているところはありますが、会社としては依頼されたものを受けています。なので発注いただける監督さんやプロデューサーさんが、時代劇や刑事ドラマを多くやっているところがあるかもしれません。僕らも恋愛ものやりたいですけどね(笑)

岡村:(笑)

平:ただ、時代劇を何本もやっているので、資料の蓄積は多くあります。例えば江戸城1つにしてもこの時代は燃えてなくなっているはずとか、この時代はこういう武器しか使わないとかの情報の蓄積が相当出来ました。

網倉:時代劇ですと、京都での撮影だと思うのですが、どのくらい京都にいるのでしょうか?

平:年の1/5ぐらい京都にいますね。ただ京都というより、太秦にほとんどいるんですけどね。

齊藤奈津子(以降 齊藤)観光とかしないんですか?

平:ジャケットとかサンダルが壊れた時には京都の中心部に行きますが、それ以外は太秦にほとんどいます。

岡村:太秦ではどういった仕事をするのですか?

平:まず撮影に入る前の打ち合わせをします。監督がほしい画に対してこのように撮影してくださいといった打ち合わせをやります。グリーンバックの配置とか、衣装の色はこれでいいのか(グリーンバック撮影なので、緑の衣装を避けてもらう)、カメラポジションの確認とか。

菊地:監督さんと一番話されるのですか?

平:監督とカメラマンですね。その次に制作さんとか美術さんとかになります。どこまでが美術でどこからがCGにするかなどを話し合います。

網倉:ほぼ全部署ってことになるんですね。

平:そうですね。結果的に全部署と話していくことになります。

岡村:撮っている素材に、CGを乗せやすい画と乗せにくい画とかあるんですか?

平:ありますね。例えば現代的なコンクリートの橋を、木で作った橋に差し替えてくれと言われた時に、手前にすすきが揺れていたらすすきのマスクを切らないといけないですよね。そういった場合は、撮影現場で実際にすすきを私含めみんなで刈るのか、フレームを上げるのか相談します。

網倉:CGだけでなく大変な作業ですね。

平:あと時代劇では電線や電柱、そしてコンクリートなどのバレものが多いので、その確認を行います。また300年経ってる建物でも、今では電気が通っているので、電気のコードを消したりとかの作業が発生します。

網倉:普通は気にしないですよね。

平:作品見ててその瞬間は時代劇に染まってないといけないので、目に入っておかしくないなと思っていても、いやこの時代スピーカーないでしょっていうことになります。そういったことを画面を見て気がつかないといけないです。

菊地:間違い探しみたいですね。

平:まさにそうです。カメラの映像見て「今、何か横切ったよね」とか気づかないと。撮り直すのかそうしないのか、VFXでやるのか、判断を迫られます。

岡村:そういう時、消せますか消せませんか?と聞かれるんですか?

平:そうです。

菊地:その場で出来る出来ないと判断しないといけないので京都に行かないといけないんですね。

平:50人くらいのスタッフがストップするわけですからね。僕の判断待ちで。

網倉:凄く怖いですね。

平:どうなんだ?っていう視線があるので、そこは判断を早くしないといけないです。迷っている時間はないです。

網倉:最初、そういう所に行って困ったりしなかったんですか?

平:しましたよ。ただ何年もやってても1年に1回くらいは、「やっちゃったなぁ」っていうミスはあります。混乱が何回か続くと「じゃ、次のカット行こう!」となった時に、自分自身も次のカットに頭を切り替えようとする。そうすると「あっ、忘れちゃった」ってこともあります。そういう時は、翌朝同じ時間に一人で空舞台の写真を撮ってきたりとかやっています。

菊地:話は変わりますが、事務所がアットホームだと感じたんですが、そして個人個人が部屋になっていると聞いたのですが、それは何か理由があるのですか?

平:何人かのスタッフが、僕は個室がいいですと意見があったのでこういった形になりました。なるべくみんなが仕事をしやすいように、わがままを聞いてあげるようにした結果でもあります。

菊地:台所があったりとか“おうち”って感じで落ち着ける環境ですが、これは狙いがあるのですか?

平:できればオシャレなハイセンスなものにしたいのですが(笑)

一同:(笑)

平:たまたま縁があってこの物件にしました。明るくしようとは気をつけてますけど、テーブルの色だったり。ただクロフネなのにって感じですが。

一同:(笑)

菊地:言われてみれば、そうですね。

岡村:スタッフさんが9名と聞いたのですが、

平:そうですね。

岡村:数多くの作品を制作されていますが、少数精鋭でたくさんの仕事をするコツとか工夫とかありますか?

平:スタッフの能力が高いんだと思います。それとスピードが早いんだと思いますし、判断が早いんだと思います。4本くらい2時間ドラマを同時にやってることもあります。

岡村:それは凄い仕事量ですね。

平:同じ仕事を時間かけてずっとやりたい人もいれば、次から次へと違う仕事をしていくほうを好む人もいると思います。どちらかというとウチは後者のほうだと考えています。「ゴジラ」やった後に、「キティちゃん」の仕事もやってます。

菊地:けっこう振り幅がありますねぇ(笑)

平:そのほうが、みんな楽しめると思ってます。

岡村:いろいろ仕事をこなせる人を採用しているのですか?それともここに来てからそうなってくるのですか?

平:たぶん、ここに来てから慣れてくるんだと思います。入る時にこれだけしかやりたくないという人だと、少人数でやっているようなウチだと楽しくないと思います。なるべく次から次へと切り替えていかないといけないんだよって話します。ただ自動的にそうなっちゃうと思っていますが、、少人数故の大変さなんですけど。

岡村:そうなんですね。

平:僕自身も違う仕事をどんどん来た方が楽しいと感じています。

網倉:HPのブログを拝見して「とても仲の良い会社さんだなぁ」と感じたのですが。アットホームというか。それは、自然とそうなっていく感じなのですか?

平:自然にですかねぇ。意識してどうこうとなるものでもないので、、

網倉:そこで信頼関係とかが生まれて、効率がよくなって次から次へ進むみたいなことがあるんですか?

平:そうですね。月に1回全社員の定例会議をやるのですが、そこの最後にあみだくじをして、掃除当番とブログ担当を決めています。私も掃除が当たったら、玄関掃除しています。

網倉:社長も?

平:そうです。

菊地:あみだくじという制度も新鮮ですね。

平:これが一番、不公平がないので。

岡村:仕事の納期を抱えている時に、掃除とブログになったら辛いですね。

平:何故か、仕事が詰まっている人ほど当たらないです。ずっと今日は会社だなぁと思っている時ほど当たるんですよ、不思議と。あと、トイレ掃除とかしている時に、お客さんが来たりして「平さん、何してるんですか?」ってこともあります。

岡村:当たりやすい人と当たりにくい人も出てきませんか?

平:ありますね。何連勝って人も。

齊藤今、目標とされていることは何ですか?

平:目標としては、ウチの会社で1本何かオリジナルなものを創ってみたいってことはありますね。それが最終目標じゃないですかね。

菊地:会社として今後どのようになっていきたいということはあるんですか?

平:会社としては、言葉が悪いですが「食いっぱぐれない会社」でありたいですね。

網倉:格好いい!

平:あと、僕イコール実写というイメージがあるのですが、取締役の一人はアニメに強いのでそちらの仕事も増やしていきたいと考えています。実写ばっかりだとそちらに固まっちゃうので、アニメも増やして循環できるといいと思っています。なるべくみんな何でも出来るようになってもらいたいので。

岡村:実写もアニメも楽しみにしています。今日は楽しいお話ありがとうございました。

一同:ありがとうございました。

株式会社クロフネプロダクト
株式会社クロフネプロダクト
KUROFUNE PRODUCTS
〒151-0065
東京都渋谷区大山町1-22 大山ハウス#B
TEL : 03-5454-3218  FAX : 03-5454-3219
http://www.kurofune-pro.jp
履歴
2002年8月 HAMMERHEADを設立 映画におけるCGIを中心に活動
2006年11月  KUROFUNE PRODUCTSに屋号を変更
2008年6月16日 株式会社 クロフネプロダクトを設立
制作業務
映画、TV-CF、ミュージッククリップ、TV番組タイトル、ゲームムービー、展示映像等、様々な分野の映像制作
*CGI(モデリング、質感、セットアップ、アニメーション)
*VFX(MATTE ART、エフェクト、グラフィック、コンポジット)
*その他(様々な分野の映像における企画・演出・制作から編集まで)
フィルムクレジット(映画)
2007「お茶の間トランスフォーメーション」監督:平興史,永見康明
2007「どろろ」監督:塩田明彦
2007「ゲゲゲの鬼太郎」監督:本木克英
2008「ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌」監督 : 本木克英
2009「ヤッターマン」監督 : 三池崇史
2009「20世紀少年 -最終章- ぼくらの旗」監督 : 堤幸彦
2009「カムイ外伝」監督 : 崔洋一
2010「宇宙で一番わがままな星」監督:伊東寛晃
2010「相棒 –劇場版II-」監督 :和泉聖治
2011「さや侍」監督:松本人志
2011「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」監督:田中誠
2011「聯合艦隊司令長官 山本五十六」監督:成島出
2011「ワイルド7」監督:羽住英一郎
2012「はやぶさ 遥かなる帰還」監督:瀧本智行
2012「ウルトラマンサーガ」監督:おかひでき
2012「HOME 愛しの座敷わらし」監督 :和泉聖治
2012「天地明察」監督 :滝田洋二郎
2013「監禁探偵」監督 :及川拓郎
2013「相棒シリーズ X DAY」監督 : 橋本一
2013「陽だまりの彼女」監督 :三木孝浩
2013「劇場版 SPEC~結~ 爻ノ篇」監督 :堤幸彦
2013「利休にたずねよ」監督 :田中光敏
2014「クローズ EXPLODE」監督 :豊田利晃
2014 「相棒 -劇場版III- 巨大密室! 特命係 絶海の孤島へ」監督 :和泉聖治
2014「万能鑑定士Q -モナ・リザの瞳-」監督 :佐藤信介
2014「花と蛇 ZERO」監督 : 橋本一
2014「海月姫」監督 :川村泰祐

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