エア・ギア 制作スタッフインタビュー


CHECK IT ザ・トリックパース!

今回は美術担当の飯島由樹子とCGテクニカルディレクター・猪原英史のお二人をフィーチャーしたこのコーナー。
アニメ『エア・ギア』の世界観を支える究極のトリック[技]がここにある!

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VOL.04
  美術担当 飯島由樹子
CGテクニカルディレクター 猪原英史
PhotoQ:制作中の印象深かったエピソードは?

猪原:CG班でもお色気シーンを扱いたいのですが、なかなか機会がなくて。エフェクトで見かけるキャラというと、なぜかイッキにブッチャ、オニギリの「小烏丸」三大男衆ばかり。「CGではシムカ……しばらく見かけないなぁ」という状況になるのが残念でした(笑)。それからこれは美術も同様だったと思いますが、バトルの主な時間帯になる夜は、色表現の幅が狭まるのでかなり大変でした。暗い舞台でディテールが判別できるよう表現するには、それなりに技術が必要ですからね。

飯島:納品時に色調整をしても、撮影スタジオごとの機材や試写用モニターの違いなど、異なる環境での色の映り方は、予想できないこともありますしね。あとは夜間の色表現で、マッハバンドの問題が起きることもあります。『エア・ギア』は都会が舞台なので、星空ではなく暗系色のグラデーションで夜を表現することが多いんです。するとマッハバンドといって、明度の境界線が不自然に目立ってしまうこともあるんですよ。それを防ぐための注意や試行錯誤は、結構しんどいですね。

Q:本編中で、『エア・ギア』ファンにアピールしたい部分を教えてください。

飯島:まずはオープニング。これはコンテに沿って1カットずつ、全部ロケハンに行ってます。早朝をイメージしているので、取材時間も合わせました。それから1話でストームライダーが集まる夜の公園の噴水。この美術は、新宿中央公園ともう一つ、光が丘公園の情景を合成して描いています。あと9話の近鉄ブルズ戦の舞台は、川崎の工場地帯がモチーフです。それぞれの放映エピソードで、私もスタッフも実際に描く作業のほかに、取材先へ赴いたこと自体も印象に残ってますね。おかげで今回のシリーズを通じた作業が、風景を観察する力や描写力を向上させる、よい鍛錬につながったんじゃないかなと思います。

猪原:僕の場合は、序盤だと4話のトリックパース。これは本編中でもカギになる設定ではあるんですが、僕も亀垣監督に相談しながら、「イッキがトリックパースの中に立って空間を把握している」感覚やトリックパースの定義が、なかなか理解できなかったんですよ。ただのワイヤーフレームを見せるだけじゃ意味がないですしね。原作を知らずに初めてアニメを見た視聴者に、「一見、図面のようで、図面とは違うイメージ」が伝わるよう表現するのは骨が折れました。ドラマで見せる部分なら、亀垣監督が手がけた8話のクライマックス。トンちゃん先生が夕陽のなかを走ってくる2カットです。ここは夕暮れのきれいな色あいを出すのに苦労して、美術さんにもさまざまなテクスチャを作ってもらったため、印象的なシーンに仕上がりました。

PhotoQ:逆にアクションで見せるシーンでは?

猪原:12話のサーベルタイガー戦。敵ライダーの視点で、背景がパース(遠近感)を強調してグッと伸びていくシーンですね。そこは唯一、スク水仮面ことクロワッサン仮面をローアングルでカメラが追っていくシーンなんで(笑)。それはさておき。ここは今までにないスピード感で相手が遠くに離れていくという動きを表現するため、校舎やフェンスにも大げさなくらいの引き面を作りました。バトルでの気持ちいい疾走感と相まって、僕としてはCGエフェクトのなかでも一番イイ感じのカットじゃないかなと思ってます。

Q:最後にファンへのメッセージをお願いします。

飯島:今回の『エア・ギア』は東映さんで、私がシリーズ全話数の美術を担当した初作品になるんです。ですので、いい意味で私たち「スタジオMAO」の看板となるよう、はりきってきました。TV放映分はこれから京都の修学旅行編を迎えて、もうひとふんばりといったところです。ファンの皆さんをがっかりさせないよう、そして「なんだ原作の迫力とか緻密さと全然違うじゃん!」などと言われないよう、スタッフ一同頑張ってますので、これからも応援よろしくお願いします。

猪原:CGディレクションとしては、今まさにベヒーモス戦の佳境です。20話の最終決戦で登場するアキラの「巨獣」にはかなり豪勢な3DCGでエフェクトを追加したので、ハッタリの効いた印象的な見せ場になってほしいですね。あとは飯島さんのお話にもあった京都編でもCGに注目してください。イッキたちが乗る新幹線やゲームセンターの筐体のなかで動くキャラなど、ある種のくすぐりになるようなCGをサプライズとして各話に用意してます。今までも、やるからには「原作に負けたくない!」といった意気込みで頑張ってきたつもりですし、原作の持っている雰囲気はきちんと踏襲しようと細心の注意を払ってきました。ファンの方々から「あっ、原作の世界観ってこうだよね。しかももっと迫力あるイメージになってるじゃん!」といってもらえるようなビジュアルを目標にしています。最後までよろしくおつき合いください。


■プロフィール
飯島由樹子(いいじま・ゆきこ)
アニメーション、ゲーム等美術・背景制作スタジオである「スタジオMAO」代表。本作『エア・ギア』の美術デザインをはじめ、『ぺとぺとさん』(美術監督・背景)、『ふたりはプリキュアMax Heart』(背景)、OVA『イリヤの空UFOの夏』(5巻・背景)、『ONE PIECE THE MOVIE〜カラクリ城のメカ巨兵〜』(背景)ほか、代表作多数。

猪原英史(いはら・えいじ)
東映アニメーション研究所出身。本作『エア・ギア』のCGテクニカルディレクターほか、劇場版『デジモンアドベンチャー02』(2000・CGアニメーター)、劇場版『デジモンアドベンチャー02 ディアボロモンの逆襲』(2001・CGアニメーター)、劇場版『キン肉マンII世 〜マッスル人参争奪! 超人大戦争〜(2002・CGディレクター)、OVA『聖闘士星矢 冥王ハーデス十二宮編』(CGエフェクト)、『Xenosaga THE ANIMATION』(CGアニメーション)など代表作多数。