エア・ギア 制作スタッフインタビュー


CHECK IT ザ・トリックパース!

今回は美術担当の飯島由樹子とCGテクニカルディレクター・猪原英史のお二人をフィーチャーしたこのコーナー。
アニメ『エア・ギア』の世界観を支える究極のトリック[技]がここにある!

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VOL.05
  美術担当 飯島由樹子
CGテクニカルディレクター 猪原英史
PhotoQ:『エア・ギア』の制作に携わることになった経緯からお願いします。

飯島:去年の冬に入る前に、吉澤プロデューサーをはじめ、東映アニメーションさんから『エア・ギア』アニメ化のお話をいただいて、それから原作漫画を読ませていただきました。ページを開いた時の、あまりに緻密な描き込みの絵に「うわぁ」と絶句しまして(笑)。仕事として携わるならば相当な覚悟がいるぞ、といった決意をもって作業に臨みましたね。

Q:亀垣監督やキャラクターデザインの佐藤さんもアニメ化の大変さは明言されてました。

飯島:お話を受けた当初は正直、非常に迷ったんですよ。どこまで原作の雰囲気を壊すことなく、私とスタッフでTVシリーズを続けられるかなぁと思い、仕事の開始直後は内心では楽しみ半分、不安半分の状況でした。

猪原:僕は原作を読んだ時の印象が、とにかく面白そうだったので、何かのかたちで携わることができたらいいなぁと考えてました。それで去年、アニメ化のお話をいただいた際には、「やります!」と二つ返事で引き受けたんですが、冷静に考え直した途端『エア・ギア』のなかでは、CGワークスで「何を表現するのが一番効果的だろう?」ということをすごく悩まされました。原作は、複雑なディテールの巨大ロボットが登場して派手なアクションを見せたり、ビームやミサイルをバシバシ撃つような戦闘シーンもない。どちらかというと今の現実に近い世界を舞台として、そのなかでCGで期待されている効果や何を表現すべきか? を考え、まずそこから作業がスタートしました。

Q:アニメ『エア・ギア』の、どのパートを担当されているか教えてください。

飯島:東映アニメーションの呼称に則したものだと「美術デザイン」、他社で制作するアニメの場合は「美術監督」にあたります。実写の映画やドラマにたとえるなら、舞台設定のアニメーション版といった作業になります。本編中に登場する美術設定については、原作で描かれたものはそこから抽出し、設定がなければ線画から新規に描き起こします。その段階をクリアすると、今度は各場面ごとの美術に用いる色を決めていく。要は、キャラクターの後ろにある背景全般の設定を統括して請け負う仕事ですね。

猪原:僕の担当はCGディレクターになります。『エア・ギア』でのエア・トレック競技は三次元、つまり空間の概念があるので、背景も立体で動くというのがコンセプトの一つです。そのCG表現をはじめ、イッキたちがトリック(技)を使うシーンなどに登場するイメージ空間のエフェクト(効果)も、CGワークスで担当する部分ですね。それ以外にもオープニング・タイトルのデジタル処理のように、いわゆる通常の2Dアニメでは表現が難しい、さまざまな効果を「立体表現」で再現するのが主な仕事になります。

Photo Q:本編中でCGワークスが用いられているシーンは、どの程度の割合になりますか?

猪原:CGカットの分量や割合を具体的に出すのは難しいですね。たとえばわかりやすい部分から挙げていくと、ブッチャの登場シーンになります。これは総監督の亀垣さんにとっても思い入れの強かったものの一つなんですが、オープニングやシリーズ序盤でブッチャが疾走するシーンには、戦車のイメージカットが重なります。これは、2Dの描き込みで対処しきれない戦車のディテールを、2Dアニメ以上に自在に動かせるCGで描こうという意図がありました。「ぜひCGで戦車を見せたい!」といったリクエストを亀垣さんからいただいていたので、CGを導入したものです。それから、1話からすでに登場しているイッキのトリックのシーンで加わる「翼の道」のエフェクトもそうです。抽象的なイメージを映像として具現化する際の表現方法にCGを使っています。

Q:トリックパースや、最近のベヒーモス戦で登場する移動中のパイプの背景もCGで表現されたシーンですね。

猪原:CG描写の効果としては王道になりますよね。目立たない部分は極力CGだと気づかれないよう自然に、ポイントとなる部分はCGワークスをアピールして、といった表現の切り替えには心をくだいてます。何話かに一度、「あれ? 今まで見たことのない映像だけど何?」と、見ているファンの注意を喚起するようなCGをさりげなく織り込むことができるとうれしいですね。